2019/06/21
北里大学の6月5日付ホームページによると、同大学獣医学部の小野久弥講師、弘前大学大学院医学研究科の中根明夫特任教授らによる共同研究チームが、マウスよりも人間に近い実験動物として利用される小型の霊長類・コモンマーモセットを用いて、黄色ブドウ球菌による嘔吐型食中毒の発症メカニズムを解明した。この研究によって、黄色ブドウ球菌の作る毒素「ブドウ球菌エンテロトキシン」が消化管の肥満細胞からヒスタミンを放出させ、嘔吐を引き起こすことが明らかになった。
嘔吐型食中毒は古くから知られ、食中毒は菌自体の感染によるものではなく、菌が食品中で作る毒素「ブドウ球菌エンテロトキシン」で起こることが明らかになっていたが、嘔吐を引き起こすメカニズムについては90年もの間、謎だった。今回、コモンマーモセットにブドウ球菌エンテロトキシンを投与したところ、嘔吐が確認されたため、「嘔吐モデル動物」として確立。 続いて嘔吐メカニズムの解明では、ブドウ球菌エンテロトキシンが粘膜下組織の肥満細胞を標的としていることが明らかに。さらに、消化管組織にブドウ球菌エンテロトキシンを作用させたところ、ヒスタミンの放出が確認された。
今後は、ブドウ球菌エンテロトキシンがヒスタミンの放出を引き起こす仕組みを明らかにすることで肥満細胞の新たな機能が明らかになる可能性があり、腸管における種々の疾病への関与を解明する意向だ。 また、コモンマーモセット嘔吐モデルは黄色ブドウ球菌食中毒に限らず多くの嘔吐関連疾患・薬剤副作用の解明に利用することができるという。研究論文は、2019年6月3日(アメリカ太平洋時間)付、国際学術誌『PLOS Pathogens』に掲載された。
(北里大学HP:https://www.kitasato-u.ac.jp/jp/news/20190605-02.html)